東北で思ったこと
「社長、夏休みはどちらに行かれたのですか?」
「今年は車で、東北へ行ってきたよ。まず、山形の山寺から蔵王、世界遺産の平泉から花巻温泉、そこから三陸海岸を陸前高田、大船渡、釜石、宮古、最後に『あまちゃん』の里『久慈』に行き八幡平で泊まり帰ってきたよ。」
「凄い距離ですね、1人で運転されたのですか?」
「そう、走行距離2000キロ弱です。我家は愛犬ジャック中心だから、ペットと泊まれる温泉宿で検索したのでこんな行程になったのよ、それと『あまロス』だった私は、一度北限の海女の里に行ってみたかったから。」
「三陸の復興は進んでいましたか?」
「漸く始まったという感じかな?神戸では瓦礫を取り除き、区画整理をやり直し、家を建てるという手順だが、三陸では、津波対策でまず防潮堤の工事と盛り土の工事から始まるからね、埃だらけだったよ。これが終わってから宅地造成だから、まだまだ避難所から戻れないね。」
「何時終わるのでしょうね?」
「例えば、陸前高田市の計画では盛り土が終わるのを『2018年度完成をめど』と言っているからまだ4~5年かかるということだな。」
「それから家を建てていたら、震災から10年も経っているじゃないですか。」
「何しろ、約120ヘクタールの土地を平均8メートル、最高12メートル盛り土するようで、約1100万立法メートル(東京ドーム9個分)の土が必要だそうです。」
「ダンプ何台分ですかね?」
「何台分か判らないけど、市やURはダンプカーでは10年かかると言って、市の中心部に何台もの大型ベルトコンベヤーを設置し、『奇跡の一本松』を見下ろす高さ30~40メートルのジェットコースターみたいなコンベアが縦横無尽の様はまさしく圧巻でしたよ。」
「東京オリンピックもあって、資材高騰で大変でしょう?」
「そうゼネコンは強気で、自治体は入札が不調だし、逃げられたら困るので言われるがままのようですよ。予算は消化しなければならないし。」
「確か、『倍返しだ!』と言ったのは住セメの社長でしたっけ?」
「『コンクリートから人へ』の民主党から自民党へ変わった途端、元に戻るのだから本当にバカだね。まあ民主党も震災の後は昔の自民党のようにばら撒いたけどね、野田政権は復興予算を沖縄の道路整備等に使ったと、選挙前に報道され大敗したんだから自民党もやり易いよね。」
「資材高騰でそれで出来るかどうか判らないけど、東京オリンピックの予算が4500億円、復興予算が25兆円、10倍いや50倍以上じゃないですか。」
「要らない物とは言わないけど、地元民も盛り土の上には住みたくないと言っているらしいじゃない、予算はすぐに使いたいだろうが、今の地元は潤っても出来た後どうするのだろう?」
「人からコンクリートへ逆戻りですか。」
「何しろ数百台のダンプとすれ違ったのには恐れ入ったよ。神戸の時は瓦礫の搬出ダンプは見たけどこんなになかったよ。」
「全国から来ているのでしょう。」
「いやいや、殆ど岩手ナンバーだったよ。聞くところによると新たに調達したのが多いそうだよ。少なくとも数年間は食えるからね。それに補助金も出てると思うよ。仕事もあるしお金も貰えれば言うことなしだね。」
「復興特別税を25年も徴収するのだから、東北の人たちのために有意義なものに使ってほしいですよね。」
「箱だけ造って、そこで住む人々の将来の生活を本当に考えているのか怪しいよ、立派な道路を造るより、漁業や観光をどうするか考えてほしいよね、何兆円も使うんだから。」
「あまちゃんの里はどうでした?」
「あまロスといっても、時間が経ったからね、でも海女センターを覗いた時は、『天野アキです!』と飛び出てくるかと一瞬思ったよ(笑)。」