起業時におけるホームページの重要性とポイント

<登場人物>
【田中さん(T)】
4年前にウェブコンサルタントとして独立し、数多くの起業家のウェブ施策を手伝っている。

【佐藤さん(S)】
10年間勤めていた会社を退職し、その時の人脈を生かして食器の輸入販売で起業を決意。
ウェブ関係のことはあまり詳しくない。
田中さんとは学生時代の同級生で、たまに連絡を取り合う仲。

今日は開業のお祝いを持って田中さんが佐藤さんの店舗(開店準備中)にやってきました。

T:久しぶりー!開業おめでとう!素敵なお店だね。準備は順調?
S:やぁ、わざわざありがとう!今週末オープン予定だけど、なんとか間に合いそうだよ。
T:それは何より。これからが大変だろうけど、君ならきっとうまくいくよ。たくさん来店してもらえると良いね。
S:そうだね。近所にチラシをたくさん配ったから、きっと大忙しだよ。
T:ところでホームページも作ったの?来る前に見ておこうと思って検索したんだけど見つからなくて。
S:とりあえず最初はチラシ配ったりして自分の足で稼ごうかなと。売上が上がってきたらちゃんと作るつもりだよ。
T:えー!!

起業時のホームページの重要性

T:チラシだけで集客するのは大変でしょ。ホームページにはメリットがいっぱいだから作らないのはもったいない!
S:でも結構なお金がかかるんでしょ?知り合いのお店は100万くらいかけたけど全然人が来ないって嘆いてたよ。
T:高くても不誠実なホームページ制作会社もあるからね・・・。今は簡単なものなら数万から作ってもらえるよ。場合によっては制作料金は無料で、月々の保守料金を数千円払うだけってこともあるね。
S:そうなの?そんなに安くできるなら作ってもいいね。
T:それにホームページはいろいろな役割があるから、特に起業、開業の時には作っておいて損はないよ。例えば「情報伝達」「ブランドイメージの醸成」「安心感や信頼感」「365日24時間稼働の営業マン」「資料請求やお問い合わせの窓口」「商品販売」。
S:へー、それは頼もしい!一人で全部回そうとしてたけど、これだけ役に立つなら急いで作ったほうがよさそうだ!でもあさってのオープンにはさすがに間に合わないかな。
T:ぼくの知り合いのところなら1日で仕上げてくれるから紹介してあげるよ。
S:それは助かるわー!じゃあすぐに発注しよう!
T:ちょっと待って。ホームページはただ作ればいいってものじゃないから。

ホームページ開設時に考慮すべきポイント

T:ホームページを作る前に、ちゃんと目的と内容を整理しないといけないよ。
S:目的と内容?
T:そう、もう少し具体的に言うと「ターゲット」「訴求内容」「コンテンツ」かな。
S:できるだけ多くの人にこの食器の良さを知ってもらって、使ってもらいたいと思ってるんだけど、そういうこと?
T:うーん、それは君が本当に思っていることだから間違いではないんだけど、お客さんに伝えるにはもっと踏み込んだ訴求が必要だね。
S:確かに、同じように思ってる同業はたくさんいるからな~。
T:そうだね。まずは「ターゲット」を明確にしよう。海外の食器に興味を持ってくれそうなのはどんな人だろう。
S:やっぱり女性が中心かな。自分で作った料理をこの食器に盛り付けてもらえると嬉しいね。安くはないから、社会人女性とかになるのかなぁ。
T:そうそう。その考え方が大事だよ。君がチラシを配ったエリアは学生が多いから、興味は持ってもらえても買ってもらうのは大変かもね。
S:うっ・・・確かに・・・ちょっと不安になってきた。
T:まだやれることはたくさんあるから、一緒に考えていこう。次は「訴求内容」だ。扱ってる食器の魅力って何?
S:よくぞ聞いてくれました。ヨーロッパで人気のある商品で、特にこのデザインが人気あるんだよね。色使いもかわいらしくて、食卓に並ぶと華やかになるんだ。雑誌にもよく紹介されてるよ。
T:それはいいね。他にはアピールしたいことない?
S:他に?商品のことは雑誌でもたくさん書かれてるから、それ以上のことはないかなぁ。
T:もっと考えて!商品以外で、例えばお店のことや君自身のことで自慢できることとかないの?
S:そうだね、ぼくはこの商品を前の会社でずーっと担当してたから相当詳しいよ。デザイナーのこととか素材のこととか。現地にも何度も行ってるからいろんな話ができるね。
T:それ!食器版ソムリエみたいな人がいるとお客さんもためになって喜んでくれるから、そういうことをホームページ上でも訴求していこう。あとは「コンテンツ」だね。
S:コンテンツって何?
T:ホームページの内容のこと。どんなことを記載するかだね。
S:よく見かけるのは「トップページ」「店舗案内」「商品紹介」「お知らせ」「お問い合わせ」とか。そういうの?
T:そうそう。あとは「店主のこだわり」みたいなのがあるといいかもね。うちはこういうことを考えてやってます、みたいな。
S:いいね。それならたくさん文章書けるわ。
T:あと「ブログ」も入れることを超オススメするよ。
S:それって日記でしょ?昔やってたから任せといて!どんなご飯食べたとか、どこ行ったとか。
T:まあそういうのを書いてる人もいるけど、それはお店のホームページでは意味ないからやらなくていいよ。
S:あら、そうなの。じゃあ何書くの?
T:訪問者に役に立つ記事を密度濃く書くのがいいよ。食器のこととか仕入れの様子とかね。
S:それなら専門分野だからいくらでも書けるけど、なんで超オススメなの?
T:集客に役に立つんだよ。詳しくはあとで!
S:あとで?まあいいや。で、その3つを制作会社に伝えればホームページを作ってもらえるの?
T:作ってもらえなくもないけど、もう少し知っておいたほうが良いことがあるんだ。

ホームページ開設に必要なもの

T:制作会社側で準備してくれることもあるんだけど、「ドメイン」と「サーバー」が必要なんだ。
S:なにそれ。
T:「ドメイン」はインターネット上の住所のようなもので、君がよく見ているヤフーの場合は「yahoo.co.jp」がドメインになるんだ。
S:あー、知ってるよ。上の方に書いてあるやつだね。確かに会社ごとに違う文字が並んでるわ。
T:そして「サーバー」はホームページを表示するためのデータを格納する箱みたいなものだね。
S:なるほどー。よくわかんないけど、そういうのが必要なんだね。
T:そして「ドメイン」「サーバー」の2つがあると、「メールアドレス」を持つことができて、そのメールアドレスでお客さんとかとやり取りもできるようになるんだよ。
S:それは嬉しい!今はヤフーのフリーメールでやり取りしてるけど、自分のメールアドレスができるなんてカッコイイね。
T:カッコイイというよりも、ビジネスを行う上での信用にもつながるんだ。最初の頃って信用はとても大事だからね。誰でも持てるフリーメールのアドレスよりも、ちゃんとした会社のメールアドレスのほうが安心感はあるよね。
S:それもそうだ。たまにフリーメールのアドレスから出会い系のメールとか来るけど、そういうイメージ持たれると嫌だしね。
T:フリーメール以外にも、プロバイダから与えられるメールアドレスをそのままビジネス用として使ってるところもあるけど、それもあまり印象としては良くないから、自社専用のドメインを取ってほしいな。
S:わかった!じゃあドメインは「tableware.com」にしよう!わかりやすくていいでしょ。ドメインはどうやって取れるの?
T:慌てるなって。ドメインは何でも好きなものが取れるわけではないんだよ。すでに他の人が使っていたら使えないし、ものによっては利用できる条件もあるんだ。
S:なんだか難しそうだなあ。じゃあそれは制作会社に聞いてみるか。
T:サーバーも制作会社側で準備してくれるところもあれば、自分で別途契約をする必要があったりするんだ。動作環境の条件を考慮する必要があったり、スペックによっては料金も大きく変わるんだよ。
S:これも制作会社に相談してみるのが良さそうだな。これでホームページが開設できれば、あとはお客さんが勝手にアクセスしてくるんだね。楽しみだー!
T:そんなに甘くはないぞ。集客が必要だったらちゃんと考えないと。

ホームページへの主要な集客施策

T:ホームページに人を呼びこむにはいくつか方法があるんだけど、主な施策としては「SEO」「広告」「SNS」「外部リンク」だね。
S:何言ってるかさっぱりわからんのだが・・・
T:「SEO」っていうのは「検索エンジン最適化」の略称なんだよ。ほら、ヤフーとかグーグルを使って調べ物したりするだろ。検索サイトには検索キーワードに対して適切な検索結果を表示させる機能があるんだけど、そこでできるだけ上位に表示させたりする策のことを「SEO」と言うんだ。
S:なるほど。少し難しそうな話だけど、上位に表示されればたくさん訪問してもらえるってことだね。
T:わかりやすく言うとそういうことなんだけど、上位表示には数多くある要因が複雑に影響しあったり、上位に表示されたからといってあまり検索されないキーワードだと訪問者も少なかったり。このテーマだけで本が一冊書けるくらいだから、また時間のあるときにゆっくり話すよ。今は集客のための施策のひとつとして「SEO」というものがあると思ってもらえればいいかな。そうそう、さっき「ブログ」をやるといいと言ったのは、この「SEO」にも関連してくるんだ。
S:お、おう。これは専門家に任せたほうがよさそうだな・・・。
T:次に「広告」。これはインターネット上の広告になるんだけど、今は「リスティング広告」が主流だね。
S:またよくわからない言葉が出てきた・・・
T:「リスティング広告」っていうのは、さっき言った検索サイトで検索したときに、通常の検索結果と一緒に表示される広告枠に出稿できる広告のことなんだ。
S:そんな枠あったっけ?
T:気づかない人もいるんだけど、そういう枠があるんだよ。君みたいに気づかない人は知らずにクリックしちゃんだろな。
S:えー、騙されたってことか―!
T:そういうことではないけど、より多くの人の目につくという意味では、インターネット上では一番主流な広告になるんだよ。
S:そうなのか。覚えておこう。
T:次は「SNS」。これは「ソーシャルネットワークサービス」の略で、ツイッターやフェイスブックといった、いろんな人とコミュニケーションが取れるサービスの総称なんだ。
S:フェイスブック使ってるからぼくにもできそうだね。そこで自分のホームページを宣伝するってこと?
T:まあそうなんだけど、あまり露骨にやると友だちが離れてくから気をつけないとね。宣伝が好きな人ってあまりいないから。これもまた今度詳しく教えるよ。
S:なるほど。話聞いておいてよかったわ。危ない危ない。
T:そして「外部リンク」。これは他所のホームページにリンクを貼ってもらって、それをクリックすると自分のところのホームページが開くっていうもの。ブログで紹介してもらえるといいね。素敵なお店見つけましたーとかね。
S:なるほどー。そのブログを読んでる人がたくさんいたら良い宣伝にもなるね。ブログで紹介してくれたら割引券あげるとかやっちゃおうかな。

成否を分けるホームページ運用

S:あとは何か気をつけることってある?
T:気をつけるというか、一番大事なことを言うよ。
S:あれ、まだあるの?(ゴクリ・・・)
T:ホームページを使って集客をするのに一番大事なのは、ホームページを開設したあとの「運用」なんだ。
S:運用・・・具体的にどういうこと?
T:商品情報を更新したり、お知らせを発信したり、さっき言ったブログの更新もそうだね。あとはお客様の意見を反映してコンテンツを追加したり、何か不具合があればメンテナンスしたり。
S:なるほど。ほったらかしはダメなんだね。
T:そう。ホームページは作りさえすればお客さんが来るものだと勘違いしている人がとても多いんだけど、そんな便利なものがあったらどの会社もウハウハだよ。しっかり手をかけて育てていくことが成功への第一歩なんだ。

S:今日はいろいろ教えてもらってありがとう!ホームページに対する考え方が変わったよ。急いで準備すすめるわ!
T:会社の業態や扱う商品、サービスによっていろいろな方法があるから、また時間があるときにいろんな事例を聞かせてあげるよ。困ったことやわからないことがあったら何でも聞いてね。