マル査がやってきた(その2)

マル査がやってきた(その2)

ある日△△国税局(自宅に入ったとことは違います支店が違います)が突然やって来ました。
3日後彼らが陣取る会議室に呼ばれた私を待っていたものは、
多くの口座開設申込書、出庫伝票の束でした。
半分以上は私の筆跡です(本来お客様自身が書くもの)。

大金持ちは警戒心が強く、自分でサインはしません(左手で書く人はいましたが)。
一回の取引は2000万~3000万円で名義も毎回変えていました。
残りは支店の女性社員に頼んで書いて貰いました。

国税官は筆跡ごとに分けてそれぞれ女性社員を特定していました。
やばい・・・「突然店頭に来られたお客様でよくわかりません。」などと・・・

最初は適当にのらりくらり答えていましたが、百戦錬磨の国税官、そうはいきません。
(私自身がお客様のように慎重ではないので)次から次へと説明のつかない証拠が・・・
でも頑張りました。

なかなか埒が明きません。
「言わないのなら、店のシャッターを閉めてください!」

机を叩き大声で怒鳴る国税官、まるでドラマです。
さすがに営業停止はキツイ、上司も
「○○君、全部話しなさい。」
「わかりました。」

結局「お上」には勝てません(半沢直樹のようにカッコ良くもありません)。
「この口座は何々さんです。」
「これ全部そうなの?」
「1人2人のせいにしているのでは?」
「じゃ~、ここでその方に電話をかけてください。」
「はい。」(そんなに出庫する人は沢山いません)
「もしもし、社長今日はいい天気ですね・・・。」

正直(恥)な私は全てを「ゲロ」
(でも国税から指摘を受けなかった口座もかなりありました「エヘン」)。

本人確認法という法律が出来たのはそれから10年以上後の平成14年だったと思います。
当時、広域暴力団稲川会が野村・日興を通じて東急電鉄を買い占めたとか、
山口組の買占め資金の出どころは住友銀行だとか。
(マーケットではこんな噂・・・真実・・・が飛び交っていました)

マネーロンダリング等の言葉すらありませんでした。
最近問題になったみずほ銀行のオートローンなんて可愛いものです。
要するに、金融機関の社員として、お金を預けてもらうことが仕事で、
お金の出どころなど興味ありませんというか知る由もありません。

・・・やばい金だとは思いましたが、時の総理(竹下登)と稲川会会長との関係が噂される時代です。
国税局にとっても、出庫した人を特定出来ても何の得にもなりません(源泉徴収は終わっています)。

金融機関の検査のおり判明したなど口が裂けても言いません。
今回の国税局検査は最初からターゲットが決まっていたと思います(用意周到でした)。

多分半年前の大蔵検査(今の金融庁検査)での情報でしょう。
これから内定が始まります。
裏金の源泉は脱税です。
脱税の証拠を固めなければなりません。
多分映画「マル査の女」のような内定やら反面調査等が繰り広げられるのでしょう。

・・・でその後どうなったかというと、
私とそのお客様とは何事も無かったように、同じような取引がずっと続きました。
もう一方のP社の社長はというと、それから半年位後地元紙の一面を
「○○所得税法違反で告発!」
と大きく飾りました。何故違うかはいずれ・・・。