そうだったのか!

「社長、ピケティの『21世紀の資本』って読みました?」

「読んでないけど、週刊ダイヤモンドの特集記事は読んだけどね。」

「世界中でベストセラーらしいですね、格差社会問題に一石を投じたというか、ビッグデータをもとに解明したそうですよ。」

「現在版『ブルジョアジーとプロレタリアート』だね。マルクスの再来かね?」

「アメリカでは上位1%の富裕層が、所得の20%、富の40%を占めているらしいですね。日本もそれに近づいていっていますよね。」

「富(株)という面では、この20年でアメリカは約10倍、日本はこの1~2年上がったといっても日経平均はまだ半値。日本では銀行預金だけしていた人が勝ち組(笑)。」

「社長がいつも言っている、忘れられた20年と格差社会の到来ですよね。」

「昔は、格差は南北問題と言って先進国と発展途上国との国際問題、今は世界中の国内問題、資本主義の欠陥と言ってはいるが、共産主義の中国ではもっと異常(笑)。」

「ピケティは世界中の200年以上のデータを分析したそうですよ。で、資本収益率(r)>経済成長率(g)を編み出した?らしいです、じゃなかった解明したそうです。」

「『金が金を生む』とは昔から言われているけど、これだけ広がるとは、セレブたちは王様の様な生活をしているらしいよ。」

「王様と言えば、先日サウジの王様が死亡したけど、皇太子が79歳と聞いた時は驚きましたね。」

「サウジは兄弟相続らしいので、先代の王様の奥様は22人、男兄弟だけで45人いるらしいよ、次の世代は200~300人いるらしいから間違いなく骨肉の争いだね(笑)。

冗談はさておき、ヨーロッパの若者の失業率を考えると格差は色んな問題を引き起こすよね、働いても生活が良くならないのではなく、働く場所がないのだから。」

「ヨットスクールに行く若者が多いのを知っています?」

「ああ、セレブのクルーザーで働くのだろう、豪華クルーザーで世界中を回れるからいい働き口なんだろう。アメリカでは、医者や弁護士もセレブお抱えが増えているようだね、成功したご褒美は、セレブのお下がりのヨットや高級車!」

「格差の広がった原因は何なのでしょう?」

「よくわからないけど、グローバル化で世界の格差が縮まり、成長が鈍化し、お金だけが余り、ウォール街でレバの効いた証券に化けて必要をはるかに超えたマネーが蠢いているからだと思うよ。」

「社長が言ってた、ウォール街が世界を牛耳るですか。格差のピンは証券会社ですよね。」

「僕のいた証券会社はアメリカの大手金融機関に買収されたから、格差で色んな問題が起こったよ。」

「あの世界トップの銀行でしょう、どんな風でした?」

「まあ~、正確には子会社化という買収ではなく、リテール(個人向け販売)は従来通りこちら側、ホールセール(法人向けや商品組成)はあちら側というように分けたのだよ。」

「あちらは投資銀行業務を選んだのですね。」

「そう、いちばん儲かるからね。しかもずるいことに、商品組成の部門だけ自分たちに吸収し、コストセンターになる法人営業などはこちらに残したのだよ。」

「だったら、逃げやすいですね、賢い!文句は出なかったのですか?」

「まー、ロト6のコマーシャルみたいなもんだよ(笑)。」

「それで何が起こったのですか?」

「問題はグループ内での格差だよ、あちら側に行った社員がこちら側を大きく上回る報酬を貰いだしたのだよ。実際には公表してないけど、引受部門のヘッドはボーナスを十数億円貰ったとか、噂はすぐに広がるからね。」

「十数億は凄いですね!」

「ドコモやエプソン等の上場主幹事で、引受手数料等で数百億以上入ったからね、その利益を分配するのは外資では当たり前だからあちら側としては当然なことをしただけなんだよ。しかし、ドコモやエプソンは山一が倒産したので、こちらに転がってきた案件なので、引受部門の連中は殆ど何もしていない、逆に転がってきたといっても、準備万端努力したのはこちら側、面白くないのは当たり前。最初は『儲からなくなったら、即クビで外資は大変だよ。』なんて言っていたが、1番面白くないのは、役員連中だよ、昨日まで自分の部下だった者が、自分が一生かかっても稼げない金額を一回で貰ったのだからね。」

「それでどうなったのですか?」

「出来高年棒制に拍車がかかったね(笑)、社員のところは余り変わらなかったけど、

上に行けば行くほど、急カーブを描き何倍にもなりました(笑)。実際、業界トップでうちの何倍も利益を上げていた野村の倍以上貰ってたと思うよ、役員は。」

「トヨタの何倍も貰う日産の役員みたいなものですね(笑)。ゴーンさんに合わすとそうなるわけですね。」

「それでも追いつかないから、ホールディングカンパニーにしたりして役員退職金として2~3回は貰ったはずだよ。トップは10億近くになっちゃてたと覚えているけど。」

「そんな事出来るのですか?」

「M&Aをやってるとよくあるのだが、株の売却で貰うのと退職金と比較して税金の少なくなるよう調整するのだよ、役員退職金規定があるかどうかなんて誰も知らないからね、今まで色んな会社の役員退職金規定を作ったよ。一般的に役員報酬×功績倍率という計算式があって、このケースは役員報酬が上がっているから簡単だよ。」

「税務署が認めたとしても、すぐに何回も貰うと税金は大変でしょう?」

「だから、年金みたいな形で貰う方法もあるそうだよ。」

「まさしく金が金を生むのですね、格差が広がるわけだ!社内格差で不満が出るでしょう?」

「ま~サラリーマンだから、不満は持ってても面と向かっては言わないよ、上は『役員は任期も株主代表訴訟もあるから大変なんだ。』といいながらチャッカリ代表訴訟保険を掛けているしね(笑)、社長なんか、反社会的勢力に襲われるからと、何処に行くのにも屈強なSPを連れていたよ(笑)総理大臣か~。」

 疲れてきたので筆を置きます、続きは次回・・・